皆さんに知っていただきたいこと

   〜ユニット企画≪UNI≫からのお知らせ〜


【特定失踪者】大政由美さんについて


大政由美さんのお母さん・大政悦子さんとの出会い、そしてその後について少しずつ作品やパンフレットに書かせていただきました。
それらをホームページでもご紹介したいと思います。








平成23年8月、ヒロシマのピースガイドをされている大西知子さんが主催された『広島原爆展』(愛媛県松山市)にお手伝いと朗読で参加させていただきました。そしてここでも多くの出会いがあり、考えさせられることがたくさんありました。 そのうちのお一人が、拉致被害者家族の大政悦子さんでした。 北朝鮮の拉致被害者については、私は無知でテレビでの報道の聞きかじりでしか内容を知りませんでした。会場で紹介され、お話を聞かせていただき、また娘さんの写真を見せられたとき、テレビでも新聞でも見たことのある方だったので衝撃でした。 そして、拉致認定者(横田めぐみさんたちのようにテレビで名前がよくでていて、北朝鮮に拉致され確認が取れている方々)以外に、【特定失踪者】という扱いで、拉致された可能性が高いとされる方々がたくさんおられることを知りました。 大政さんの娘さんはその【特定失踪者】なのです。 またその家族の皆さんが、一生懸命に家族が戻ってくるように活動をされていること、テレビや新聞で知らされない分、とても地道な、また厳しい中で活動されているということを知り、心が痛くなりました。 少しでもお役に立てればと、《UNI》でも呼びかけていきたいと考えました。少しずつ、知ってもらうところから始めようと思いました。
      平成24年『2WAY』パンフレットより あつみ空光


平成23年夏・松山に行った時いろいろな方を紹介いただき、その中に拉致被害者家族の大政悦子さんがいらっしゃいました。
大政さんの娘さんの由美さんは、1991年3月に卒業旅行で韓国にいったきり、行方がわからなくなりました。由美さんは正式には横田めぐみさんたちのように拉致認定者ではなく、《特定失踪者》という扱いになっています。《特定失踪者》は拉致された可能性が高いとされる方々で、テレビや新聞でほとんど取り上げられないため、あまり世間に知られていません。
そのため、家族や支援者の方たちだけで、とても地道な、また厳しい中で活動をされています。昨年、無念の思いでご主人はこの世を去られました。
拉致被害者のご家族はもう高齢で、会うことなく亡くなっていかれる方が増えてきました。
知り合ったのも何かの縁。私たちに協力できることがあればと、《UNI》でも呼びかけていくことにしました。少しずつでも知っていただいて、
一日も早い解決につながることを願ってます。
     平成25年『銀河鉄道の夜』『ホタルガナクトキ』パンフレットより あつみ空光



   



この出会いは2012(平成24)年の第13回本公演『2WAY』の中で
フリールポライター・華音 繁の言葉として語られています。
そのシーンを載せさせていただきましたので、是非お読みください。

  果歩=地方テレビ局のキャスター
  サキ=地方テレビ局のスタッフ
  繁 =フリールポライター
  夾 =被爆者・ボランティア


果歩  ああ・・もう最低・・。

繁   何があったんだ?

サキ  この写真知ってる?

繁   ああ、よく見るやつだな。

サキ  この人、誰か知ってる?

繁   山口彊さんだろ?二重被爆の。

サキ  知らなかったのよ。

繁   は?

サキ  私たち、この写真のこと知らなかったの。

繁   それと、さっきの会話とどう関係があるんだよ?

サキ  天主堂の企画の前は、二重被爆者の話を調べてたのよ。そのこと、夾さんに話したとこだったのよ。

繁   で、知ってるつもりでベラベラしゃべってたわけだ。

サキ  そうじゃないけど・・。

繁   だけど、実際は知らなかった。せいぜい手記読んだくらいだろ。

果歩  そうよ、まさにそうよ。だって、まだこれから取材に行ってって思ってたから。まだ途中だったのよ。

繁   だったら話さないことだな。だいたい原爆のこともよく調べてないだろ、お前ら。よくそんなので

果歩  わかってるわよ。私の認識が甘かったってことぐらい。よーくわかったわよ。私が無知だったのよ。

繁   お前だけの問題じゃないだろ。それが人の心を傷つけた。

果歩  だからわかってるっていってるじゃない。夾さんの思いが手に取るように伝わってきたわよ。自分が何をしたか、理解してるわよ。

繁   それで、なんで話してくれなんて言える?

果歩  伝えたいんじゃないかと思って。私も知ったほうがいいと思ったのよ。知らなきゃいけないと思うのよ。
   きっと知らない人は大勢いる。だったらこのことを少しでも伝えた方がいいと思うのよ。

繁   だけど、夾さんは心を閉じてしまった。

果歩  だから・・どうしていいかわからないんじゃない。

繁   落ち込んでる方向性が違うんじゃないのか?

果歩  どういう意味よ?

繁   伝えるために努力して、心を閉じられてどうしていいかわからないって、お前自分のことばっかりだな。

果歩  しょうがないじゃない。仕事なんだから・・。それに・・。

繁   何?

果歩  わかってるんだってば・・。ホントに・・。

サキ  わりに傷つき易いのよ。単純な性格だからついその時のはずみで物言っちゃうけどね。

果歩  これだって思ったら突っ走っちゃうんだよね。で、いつもあとから後悔する。

繁   ま、それが分かってるんなら、これからどうするかだな。後悔しておわりじゃ意味ないしな。
   そのあとどうするか。人任せじゃなくて、自分で知る努力はするんだな。

果歩  偉そうに言わないでよ。そりゃあんたはいろいろ知ってるから余裕かもしれないけど。

繁   そうでもないさ。

果歩  あんたに私の気持ちはわからないわよ。

繁   お前の気持ちはわからないだろ。なんで俺が分からなきゃいけないんだ?あ、同情が欲しいタイプ?

果歩  馬鹿にしてるでしょ。

繁   ま、そう落ち込んだってしょうがないだろ。俺もさんざんそういう経験あるからさ。

果歩  昔でしょ?最近そういうのないでしょ。

繁   いや、昨年にもあったよ。

果歩  落ち込んでたわけ?

繁   悩んだなあ。つーか、まだ現在進行形。

サキ  何があったのよ。あんたが悩んでるタイプには見えないけど。

繁   昨年に広島原爆展があって、それの手伝いに地方に行ったんだ。その時に主催の人から一人の人を紹介された。

サキ  何?女の人?

繁   そういうのじゃなくて。大政悦子さんって言う人なんだけど、聞いたことある?

サキ  いや、別に。記憶にはないけど有名な人?

繁   じゃあ、横田早紀江さんは?

果歩  それは知ってるわよ。拉致被害者の横田めぐみちゃんのお母さんでしょ。

サキ  あ、大政さんっていうのも拉致被害者の家族?

繁   そうなんだ。娘さんは大政由美さんといって、大学の卒業旅行で韓国にいってそのまま行方不明になったらしい。

サキ  それはいつの話?

繁   21年前。

果歩  私たち生まれてるじゃない。ていうか、私、同い年くらいじゃない?

サキ  そうだね。

繁   だけど、大政さんのことはあまりニュースでも聞かないだろ?

サキ  実際家族にはどれくらいの情報が入ってるの?

繁   俺もしりたくて聞いたよ。そしたら、逆に聞かれた。

果歩  なんて?

繁   あなたはどこまでご存知ですかって。

サキ  なんて答えたの?

繁   正直、テレビで聞いただけで興味をもって調べたわけじゃないし・・、なんか言うのも気が引けたよ。
   真剣に活動してる人がいるのに、俺はホントに何も知らない。何を言っていいかわからなかった。

サキ  じゃあ、答えなかったの?

繁   答えたさ。正直にな。テレビで見るくらいのことしか知りませんって。

サキ  そしたらなんて?

繁   私たちも同じくらいしかしらないんですって。

果歩  ええ?じゃあ・・ホントになんにもわからないままなの?

繁   そうらしい。拉致被害者の認定もないから、活動も個人的にしかできない。予算もないしね。

果歩  じゃあ、大政さんはどうされているの?

繁   講演会に行ったり、ビラを配ったり、本当に小さく活動されてる。

果歩  ご両親だってもうけっこうな年齢よね?横田さんご夫妻だって高齢だものね。

繁   そうだね。それでも娘を思う一心で、何にもない中、気持ちだけで世間に知ってもらおうとしている。
   この間、大政さんから手紙が届いた。だけど、どうしていいかわからないんだ。何ができるんだろうってね。
   広島行った時も被爆者の人が証言を聞かせてくれた。こういう人に何かを伝えることやってると、何かしらの期待を持たせてしまうんだろうな。
   強い思いを託される。でも、俺たちに出来ることはしれている。でも、何かしたい。
   正義感じゃなくて、大政悦子さんという一人の母のために、また生きてるうちに伝えたいとする被爆者の人ために。
   気持ちを受け止めたんだって知ってほしいんだ。伝わったよって、少しでも笑顔になってもらえたらって・・。俺の勝手な思いだけどな。

果歩  わかるよ。それ、すごくわかる。

サキ  だけど、どうしようもないんだよね。悲しいかな、私たちは有名人じゃない。

繁   今回、社長から言われてこの取材に関わったけど、ホントはさ、テレビの関係者と近づいてこのこと取り上げてもらえないか頼むつもりだったんだ。

果歩  やろうよ。少しずつでもいいじゃない。

繁   勉強不足だ。もう少し俺自身が努力して調べようと思う。大政さんにまた会いに行って取材を重ねようと思う。

果歩  知ってもらうほうが先じゃないの?

繁   知らないことは残酷だ。そうやって何も知らずに関わるのは、さっきみたいに失敗するもとだ。
   知ってもらおうとしてる人が一番傷つくのは、何も知られていないことだと思う。

果歩  まずは知ることからはじめるべきか・・。真実を追うってことよね。

繁   知らないことを知る。それは誰でもはじめがあるから恥じることはないと思う。でも、知ったそれをどうするかだ。
   それは俺たちに任されている。どうしていくのか、そこが大切なんじゃないかな・・。

サキ  だからどうにかしたいってことね。

繁   ・・だから、それは俺の勝手な思いで、そうしたいっていう希望なんだけどな。

サキ  意外に自信ないのね。

繁   わりに小心者なんで。









                                        

inserted by FC2 system